ISID engineering

株式会社 ISIDエンジニアリング

コラム

エンジニアが「考える」ための考え方
~分けて、整理して、繋げる~
第38回:加工工程や製造工程の繋がりを表現する「工程対応二元表」

技術アドバイザー 岡建樹

 今回は、QFD(二元表)の応用のひとつとして、製造工程や加工工程等に代表される「繋がっている現象」に対する二元表を用いた表現方法について紹介をします。

 本コラムの第17回で、玉川大学の永井一志教授の言われている定義として、「QFDとは、新製品開発にかかわる次元の異なる情報を展開整理し、二元表を利用しながら繋げていく手法である」ということを示しました。その中で、部品に関して、部品の特性、製造工程、工程パラメータを次元の異なる情報として考えると、フローと二元表は、図1に示すようになります。部品の特性-製造工程二元表、製造工程-工程パラメータ二元表の2つの二元表で表現できます。

図1
図1

 製造工程のことを考えてみます。通常、製造工程は複数の工程から成り立っています。そして、それらの工程は繋がっています。複数の工程が繋がっていることで、図2に示すように、いくつかの課題があります。
図2
図2

 ひとつ目は、品質問題の原因分析で、どの工程のどの要因で起こっているのかを順序立てて調べることが必要なのですが、それがなかなか難しいということです。図1の二元表表現では、工程間の繋がりによる関係までは表せていませんので、技術者の頭の中で関係を考えながら調べるということになります。

 ふたつ目は、上流工程の設計や条件の変更が、繋がった工程を通して最終的な品質にどのように影響するかを確実に知ることが難しいということです。図1の二元表において、工程と部品の品質との関係を示していますが、その工程、その工程に関係する工程パラメータが、工程間の繋がりを通して、どのように影響し合って最終的な部品の品質に影響を与えているかを表すことはできていません。

 こうした課題に対応するための方法として、「工程対応二元表」を提案しています。図3に「工程対応二元表」の考え方を示します。
図3
図3

 手順を追って説明します。
  • 図1に示したように、QFDでは、情報を、部品特性、工程、工程パラメータに分けて、それぞれを繋いでいます。その中で工程は、図2で示すように複数の工程が繋がっています。そして、それぞれの工程に工程パラメータが関係しています。その各工程をブロックとして、入出力で繋いで全体の工程を表現します(工程ブロック図)。
  • それぞれの工程の内容(メカニズム)を理解します。それぞれの工程の入力と関係する工程パラメータによって、どのようにしてその工程の出力が決まるかというメカニズムを理解するということです。
  • その工程のメカニズムの理解した結果を、各工程ごとに二元表で表現します。縦軸に入力と工程パラメータ、横軸に出力をとった二元表です。
  • 前工程の出力が次の工程の入力になりますので、各二元表は、入出力を通して繋がっています。工程全体を、繋がった二元表群として表現できるということです。
  • 最終工程の出力が品質に関係しますので、必要に応じて、最終出力と品質特性との関係の二元表を作成します。最終工程の出力を部品の品質としている場合は、この二元表は必要ありません。


 図3の下半分に示した二元表群が「工程対応二元表」です。

 この「工程対応二元表」を用いることで、図2で示した課題にどのようにして対応しているかを説明します。
 ひとつ目は、品質問題がどの工程のどの工程パラメータの影響で起こっているかを、順序立てて調べる場合の活用です。最終工程の出力である品質項目の中の問題のある品質項目から開始して、「工程対応二元表」の繋がりを通して、関係する工程の入出力や工程パラメータを全て抽出することができます。図4にその例を示します。詳細は説明しませんが、「レーザー溶接加工工程」を事例としています。「クラック」という品質問題にかかわる各工程の入出力と工程パラメータが抽出されています。
図4
図4

 抽出された情報が、工程の流れに沿って整理されていますので、品質問題の原因を検討する時に、問題発生メカニズムを含めて確実に考えることができます。また、関連する各工程の入出力が明らかになっているということは、原因分析のための計測項目が明らかになっているということでもあります。

 ふたつ目は、工程において設計変更や故障モードに相当する変動があった場合の品質への影響を、確実に抽出できるということです。設計変更する工程パラメータから開始して、「工程対応二元表」の繋がりを通して、最終工程の出力である部品品質までの関連情報を全て抽出することができます。同じ事例で、図5に例を示します。材料の物性(光吸収率)を変えた時に、各工程の入出力の繋がりを通して品質へどのような影響があるか、どの品質項目に影響があるかを示すことができます。
図5
図5

 工程の設計変更や変動の影響が、各工程の二元表の入出力を通してどのような品質に影響を与えているかを表現できていますので、その品質の状況を確認することで、設計変更や変動による品質問題発生を未然に防ぐことが可能になります。

 「工程対応二元表」のその他の効果としては、各担当工程の位置付け(全体との関係)が明確になり、技術の伝承にとって有用であるということ、また、各工程の二元表をモジュールと考えることで、各工程の技術的な変更などにも容易に対応できるということなどがあります。

 本コラムの副題である「分けて、整理して、繋ぐ」との関係を示します。
 それに対して、「工程対応二元表」では、機能や工程等の横方向の繋がりのある情報を、機能ごと、工程ごとに分けて二元表で整理し、それぞれを繋いで機能全体、工程全体を表現しています。従来のQFDの縦の繋がりだけでなく、機能や工程の横の繋がりも表現できるようにしているということです。QFDを進化、拡張させているという意味で、QFD-Advancedのひとつの形と考えています。

 次回は、「工程対応二元表」の2回目として、特に製造工程で重要な「センサーと制御」の位置付けをこの二元表で表現できるということを紹介します。何か品質問題が起こった時に、原因として、工程パラメータだけでなく、センサーや制御に原因がある場合も抽出することができるようにしているということです。

2021.7.12

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