ISID engineering

株式会社 ISIDエンジニアリング

コラム

エンジニアが「考える」ための考え方
~分けて、整理して、繋げる~
第37回:技術の「アナロジー(類似性)」の活用(4)

技術アドバイザー 岡建樹

 今回は、アナロジーの第4回目として、各社が持っている「過去トラブルチェックリスト」群を、整理し一般化した上で二元表を用いて表現し、想定外の問題にも対応できるようにするという方法について紹介をします。本コラムの第25回から28回にわたって示してきたQFD-Advancedの応用のひとつでもあります。

 過去トラブルチェックリストの目的は、過去発生したことがあるトラブルを再発させないことです。そのために、チェックリストを作成し、過去の発生状況での再度の確認、あるいは過去と同様の対策を行っているかどうかを、チェックリスト毎に個別に事前に確認するというやり方をします。
 そのやり方には、いくつかの課題があります。
 一つ目は、チェックリスト項目が多すぎて、全部を確実にチェックできているかどうか分からない、また、多いことからチェックの質が低下しているのではないかということです。二つ目は、チェックリスト項目間の関係性が分かりにくく、同じような項目を繰り返してチェックしている場合、あるいは、相反するチェック項目に対してもぐらたたきになっている場合があるということです。そして、三つ目は、チェックリストは、同じ不具合現象の再発を防止することはできるが、同じ「ような」問題の発生を防止することにはならない、つまり、同じ「ような」現象による不具合までは気がつきにくいということです。

 そうした課題の原因は、チェックリスト項目という「木」の1本1本は見ているけれども、チェックリスト項目全体という「森」を「森」として見ていないことにあると思われます。
 「森を森として見る」には、チェックリスト項目全体を見える化し、その本質(エッセンス)を抽出し、「森」として重要なところ、領域を知った上で対応を検討することが必要です。周辺の情報をそぎ落として本質を知って、それを基にして、アナロジーで周辺の状況を含めて課題を明確化し、それへの対応を検討するということです。

 チェックリストの具体的な項目をもとにして説明をしていきます。図1の左側のブロックは、チェックリストの項目一覧の例です。それらを横軸にした表が図1の右側の表です。その表の中に、各チェックリスト項目を整理していきます。

図1
図1

 表に整理された内容を、横軸の各項目の中で分類します。その分類結果が、図2に示しますように各二元表の軸になります。「部品・属性」-「変化内容の展開」の二元表、「変化内容の展開」-「使用条件・入力展開」の二つの二元表です。これによって、チェックリストを個別に見るのではなく、全体として見るためのフレームワークができたということです。
図2
図2

 これらの二元表群の中に、各問題でのチェックリスト項目を位置付けていきます。例えば12個のチェックリスト項目を位置付けると図3のようになります。
図3
図3

 フレームワークとしての二元表群を見ることで、チェックリストの「森」を見ているということが分かります。それを見ながら、例えば図3の中の1~3について次のように考えることができます。
  • この「設計要素(部品)」に関するチェック項目が多いので注意を要する。また、対象部品の周辺部品を変更する場合にも注意する。
  • チェックリストからすると、多くの部品の「変化の内容(故障モード)」としてこの変化が生じることが多い。したがって、全く同じ故障だけでなく、同じ“ような”部品の変化(故障)にも注意する。
  • この部分の「使用条件」「入力」の影響によるチェック項目が多い。この使用条件での評価に気をつけることは当然であるが、評価の効率化のためにまとめて評価を行うことができる。
 また、チェックリストの「森」を見ることができるということは、対象システムの特徴を知ることができること、弱点を知ることができることです。その弱点の周辺で今後起こりうる可能性がある問題を予測し、事前に対応することが可能になります。同じ“ような”問題の発生防止、つまり本来の未然防止ができるということです。

 本コラムの副題との関係では、チェックリストを分類し(分けて、整理して)、それらをフレームワークとして作成した二元表群でまとめる(繋ぐ)ということになります。「分けて、整理して、繋ぐ」という考え方を活用している事例と言えます。

 次回は、QFD(二元表)の応用として、製造工程や加工工程等に代表される「繋がっている現象」に対する二元表を用いた表現方法について紹介をします。これまでのQFDでは、顧客の要求品質⇒商品の品質特性⇒機能展開⇒部品の展開⇒製造工程の展開 というように上位~下位への垂直的な関係を二元表で表現していましたが、それと直交する水平的な関係(例えば機能同士、工程同士)を二元表で表現する方法ということです。

2021.6.28

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