ISID engineering

株式会社 ISIDエンジニアリング

コラム

エンジニアが「考える」ための考え方
~分けて、整理して、繋げる~
第36回:技術の「アナロジー(類似性)」の活用(3)

技術アドバイザー 岡建樹

 今回も、技術の「アナロジー(類似性)」の活用に関して紹介をします。特に、「失敗学」という方法論とアナロジーとの関係をどのように理解するか、そして、その理解は、先回にも示しましたアイデア発想法である「TRIZ」という方法論とよく似ているということについて説明します。

 先ず「失敗学」について、参考資料1の書籍を基に、筆者の理解を示します。図1は、筆者なりにかなり簡略化した失敗学のフレームワークです。

図1
図1

 ある問題が発生した時に、その問題現象の発生原因を探索します。最初は、物理的な原因(技術的な原因)を探索し、その上で、人による原因も探索します。いわゆる、なぜなぜ展開はそのための方法のひとつです。そうした物理的原因、動機的原因に対して対応策を検討しますが、それは、図1に書いていますように、同じ問題を再発させないようにするためです。同じ問題の再発防止が目的です。
 実際には、同じ問題の再発は防止できても、同じ“ような”問題、あるいは、想定外の問題が発生することがあります。それらにどのようにして対応するかということです。

 失敗学の考え方では、問題の分析において、動機的原因分析に留まるのではなく、その内容を「一般化」「概念化」することが必要であるということを強調しています。「一般化された動機的原因」を抽出するということです。一般化、概念化とは、先回のコラムの等価変換理論のところで述べましたが、対象システムの中で、そのシステム特有の部分をそぎ落として本質的な部分のみを残すということです。
 一般化できると、対象を見る視座が高くなり、視野が広がり、発生問題以外で発生するかも知れない問題現象(想定外の問題)を想定できるようになります。また、一般化された動機的原因に対して、過去の知見等を参考にして、一般化された対策の考え方を知ることができます。過去の知見等を参考にして、対策の考え方のリストを作ることも可能であり、そのリストを参考にして対策の考え方を知るというやり方もあると思います。
 その一般化された対策の考え方を、上記で想定した「想定外の問題」に対して適用することで、「発生するかも知れない問題現象の発生防止」ができる、「想定外の問題の発生防止」ができるということです。

 なお、失敗学そのものはとても広い概念を持っています。上で紹介したことは、その中の一部を、筆者なりの解釈として示したものであることをお断りしておきます。詳細が知りたい場合は、参考資料1の書籍等をご覧いただければと思います。

 次いで、問題解決のためのアイデア発想法のひとつであるTRIZについて説明をします。基本的な概念は、図2のように示すことができます。特許等の分析結果とヒント集(各種DB)との関係等については、本コラムの第19回をご覧ください。
図2
図2

 対象となる具体的な問題がある場合、先ず、その問題を抽象化、一般化します。上でも述べましたように、対象システム特有の部分をそぎ落として、その問題の本質を明らかにするということです。それを「一般化された問題」と言います。
 一般化された問題に対して、一般化、抽象化されたヒント集(各種DB)がありますので、それらを用いて解決策を考えるということです。一般化、抽象化された問題とヒント集との関係ですので、その組み合わせから一般化された解決策を考えることは比較的容易にできます。また、一般化されていますので、解決策を考えるための進め方を予め決めておくこともできます。技術的矛盾問題に対する矛盾マトリクスの活用はその例です。
 一般化された解決策をいくつか考えたならば、その解決策の考え方を現実の具体的な問題に適用して、具体的な解決策の案を複数考えます。そして、その解決策をそれぞれ評価するという手順になります。
 具体的な問題から直接解決策を考えると、視野の狭い解決策になる可能性が高いのですが、問題を一般化してから解決策を考えることで、広い視野での解決策を見出す可能性が高くなります。また、一般化したことで、様々の知見の集合体であるヒント集を活用することもできるということです。

 図1と図2を比べてみて、また、それぞれの図の説明を比べてみてお分かりのように、失敗学もTRIZも、対象である問題現象を一般化、概念化して本質を取り出し、その本質に対して考えることで、高い視座、広い視点から対象を見ることができるというやり方です。本質を考えることで、過去の知見とのアナロジー(類似性)を活用しています。アナロジーを活用することがとても有用であることを示しているとも言えると思います。
 別の表現では、失敗学とTRIZとは、アナロジー(類似性)の関係にあるとも言えます。このように、方法論同士のアナロジーを考えることで、それぞれの方法論の本質を理解できるようになると思います。

 次回は、アナロジーの第4回目として、各社が持っている「過去トラブルチェックリスト」群を、整理し一般化した上で二元表を用いて表現し、想定外の問題にも対応できるようにするという方法について紹介をします。本コラムの第25回から28回にわたって示してきたQFD-Advancedの応用のひとつでもあります。

2021.6.14

参考:

  • 「失敗学実践編」濱口哲也・平山貴之著 日科技連出版社 2017年
  • 「体系的技術革新」Darrell Mann著 中川徹監訳 創造開発イニシアチブ 2004年
  • TRIZホームページ(http://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/
一覧へ戻る
PAGE TOP