ISID engineering

株式会社 ISIDエンジニアリング

コラム

エンジニアが「考える」ための考え方
~分けて、整理して、繋げる~
第35回:技術の「アナロジー(類似性)」の活用(2)

技術アドバイザー 岡建樹

 先回に引き続いて、技術の「アナロジー(類似性)」の活用に関して紹介をします。今回は、アナロジー(類似性)の考え方をどのように生かすか、例えばどのようにして新しい発想に繋げていくかということについて述べていきます。

 新しいアイデアを発想するための方法については、本コラムの第19回、第20回で紹介をしてきました。その中で、アイデア発想法は3つに分類できるということを表1で示しました。

表1
表1

 アナロジーを活用したアイデア発想法として、今回のコラムでは、「類比思考法」と、「強制連想法」の中の「技術進化のトレンド」についてお話をします。どちらの方法も、しっかりと「問題分析」を行い、その結果を基にヒント集を有効に活用する方法です。両者について、それぞれ説明をしていきます。

 「類比思考法」の中の代表的な方法が、表1の中にも示していますが、「等価変換理論」です。その「等価変換理論」に基づく新しいアイデアを発想する進め方を図1に示します。
図1
図1

 等価変換理論に基づくアイデア発想のステップにおける重要なところは、図の中に赤字で示していますが、ステップ2、3、4です。
 本質的な願望を設定するには、対象とする現象における問題の本質を知ることが必要です。そのためには、先回のコラムでも書きましたが、対象の現象からその現象特有の部分をそぎ落とし、その結果残った本質的な部分のみで考えるということが大切です。本質的な部分における願望(どういう状態を実現したいのか)を考える、それも動詞で表現できる形で考えるということです。その上で、その本質的な願望を含んでいる具体的な参考事例を探します。
 どのようにすれば具体的な参考事例を探し出すことができるのでしょうか。参考になるかどうかは、その参考事例の本質が対象現象の本質的な願望と同じであるかどうかということですので、参考事例の本質を見出すことができなければなりません。つまり、様々な現象やシステムを見たときに、それの本質は何なのかということを常に考える習慣をつけ、本質を見出すことができる能力を高めることが必要だということです。
 ITの力を用いることもできます。最近では、いわゆる「意味検索」という観点で、何をしたいのか(願望、動詞)を入力することでそのことに関係する様々な情報を検索し、抽出することが可能になっています。

 次いで「技術進化のトレンド」について説明をします。第19回のコラムで、図2を用いてTRIZのヒント集について紹介しました。それらのヒント集は、数多く(250万件以上)の特許の分析結果から作られています。「技術進化のトレンド」もその一つであり、各特許に書かれている個別の解決策ではなく、解決策群全体としてどのように技術が進化しているかという観点でまとめられたものです。個別の解決策の本質から、多くの解決策が同じような技術の変化の方向を示しているということを知り、それらを「トレンド」としてまとめています。
図2
図2

 「技術進化のトレンド」としては31個ありますが、その中でよく知られているものをいくつか表2に示します。
表2
表2

 「トレンド」は、幅広い様々の産業で諸システムがどのように発展してきたかを分析した中で観察されたものであり、特許等から抽出された事実が、このトレンドの方向に進化しているシステムの例を数多く示しているということ、そして、「なぜそのように進化するのか」という問いに対する答えは、「トレンドに沿って進化することによるメリットがどこかにある」ということです。その他のトレンドや事例等の詳細は、参考2、あるいは、参考3のHPを参照してください。
 様々なシステムを抽象化して本質を整理すると、産業分野を問わず、同じような方向に進化していることが分かるということです。アナロジー(類似性)そのものと言えます。

 活用方法、手順は次のようになります。
 具体的な課題に対して、それを抽象化して課題の本質を知り、その課題の本質に適用できるトレンドをトレンド一覧から探します。そして、トレンドの中での対象システムの位置を確認した上で、トレンドに従ってさらに進化するとすればどのようになるかをトレンドを基に考え、その状態を具体化していくという手順になります。トレンドを見本として、アナロジーに基づいて新たなアイデアを出すということです。

 次回もアナロジー(類似性)の活用の関係の続きとして、「失敗学」と「アナロジー」との関係をどのように理解するかということについて紹介します。

2021.5.31

参考:

  • 「図解でわかる等価変換理論」等価変換学会編著 日刊工業新聞社 2005年
  • 「体系的技術革新」Darrell Mann著 中川徹監訳 創造開発イニシアチブ 2004年
  • TRIZホームページ(http://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/
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